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龍野ゆうき

Author:龍野ゆうき
複数の小説サイトで執筆活動をしています。こちらでは小説の番外編や小ネタなどを置いています。創作意欲の発散場所。または、ネタ帳とも言う。(笑)


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刹那の憎悪 FINAL ‐後編‐
続・刹那の憎悪の続編(FINAL‐前編‐の続き)

【ツインクロス】【プリズム!】後日談。番外編
[登場人物]夏樹、唯花




「あなた、久賀くんの何?もしかして後から出てきて、すっかり彼女気取りなの?」

唯花が発したその言葉には、すごく棘があって。
『面白くない』という感情を隠すことなく瞳に表していて。
彼女がまだ雅耶のことを好きなんだということを理解した。

二人がいつ、どんな別れ方をしたのか自分は知らない。
雅耶は「自分の気持ちに正直になっただけ」と言っていたけれど。

(唯花ちゃんは、納得…してないんだ…)

その想いをぶつける相手に、見も知らぬ『夏樹』を選んでしまう程。


「あなたは知らないかもしれないけど、私と久賀くんは付き合っていたのよ。いつも一緒に帰って、色々な話をして…」

知ってる。
そんな二人を自分はいつも近くで見ていたから。

「久賀くんの好きなものの話。家族のこと、仲の良い友人のこと。幼なじみの野崎くんのこと…。沢山教えて貰ったわ。でも彼は、あなたの話なんか一度もしなかった。彼の中に、あなたの存在そのものがなかったのよ。なのに今頃出て来て何なの?図々しいのよっ」

唯花は、夏樹の制服の襟元をギッと握り掴むと、後ろの壁へとその身体を力任せに押し付けた。
「……っ…」
女性のわりに意外に強い力に押され、夏樹はコンクリートの壁に軽く背を打ち付けてしまった。


明らかな『嫉妬』。
本来なら、こんな仕打ちを受けるいわれは自分にはない筈だ。
(…だけど…)
夏樹は唯花の行動に驚きはするものの、怒り等の感情は浮かんでこなかった。

雅耶のことが好きだという気持ち。
そこから生まれる嫉妬心。
それを隠すことなく表せる、そんな彼女を羨ましくさえ思う。
こんな気持ちは、彼女からしてみれば「馬鹿にしている」と取られてしまうかも知れない。
けれど、自分はそんな風に素直に想いのままに行動することが出来ないから…。


「何なの?その取り澄ました顔。この状況でまだ余裕ぶってるつもり?…ホントにムカつく女ね」

そう言うと、唯花は何処からか小さなカミソリの刃を取り出した。
「その綺麗な顔に傷を付けてあげましょうか?二度と久賀くんの前に出て行けないくらい…」
唯花は、それを人差し指と中指の間に挟み込むと夏樹の首元へと近付けようとする。

だが、夏樹はその腕を咄嗟に掴んでそれを制した。
「なっ…!!」
思いのほか強い力で握られ、唯花は動揺を見せる。

「何よあんたッ。気やすく触るんじゃないわよっ!離しなさいよっ!」
ぐいぐい腕を引こうとするが、びくともしない。
表情を変えない夏樹の瞳が、唯花を静かに見つめている。
「こ…のっ、馬鹿力っ!」
焦りだした唯花に、夏樹は静かに口を開いた。

「駄目だよ。唯花ちゃん…」
「なっ…?」
「そんなもの、使っちゃ駄目だ」

夏樹は掴んでいない方の手で、そっと唯花の持っているカミソリの刃を奪うと遠くへ放り投げた。

カシャーーン…という、音が室内に響き渡る。


「あんた…何で、私の名前…」

自分は目の前のこの女に名前を名乗ってはいない筈だ。
それに、この声には聞き覚えがあった。
見た目の可憐な少女には若干似つかわしくない、その中性的な低めの透る声。
そして、自分を静かに見つめる涼し気な、まっすぐな瞳。

それは、彼の大切な幼なじみだという少年のそれに似すぎていた。
一度、自分も数人の男たちに絡まれた時、助けて貰った彼のものに。
あの時も、自分に対して振り上げられた男の腕をこうして掴んで、静かに諭すような瞳をしていて…。

双子だから似ているのか…とも思ったが、違うと。
心のどこかで自分の勘がそう告げていた。

「あ…あなた…っ…」

動揺を隠しきれず、知らず震えてしまう声。
それを全て汲み取るように、目の前の人物は僅かに眉を下げた。

「ごめんね、唯花ちゃん…」

『詳しくは言えないけれど…』それらの言葉を飲み込んで。
瞳と声だけで自分が以前の『冬樹』であることを隠さずに表す。

「でも、キミが『夏樹』なんかの為にそんな風に手を汚しちゃ駄目だ」
「あ…っ…」

『夏樹』というのが、今目の前にいる少女の名なのだろう。
だが、明らかにそれは自分の知っている『冬樹』そのものだった。

「キミと雅耶に何があったのか…オレには分からないけど…。キミと別れるなんて雅耶は女の子を見る目がないなって…。ずっと、そう思っていたよ」
「……っ…」

あの時の少年の瞳でそう語る目の前の人物は、それ以上は語らず、寂し気に微笑むと。
呆然と佇んでいる唯花の横を通り抜け、ゆっくり出口へと歩きだした。

何故、あの時の少年『冬樹』が現在、少女の姿をしているのか。
唯花がどう考えても答えが出ることはなかったけれど…。
その寂し気な背中に、唯花はそれ以上声を掛けることが出来なかった。




超!久々の更新です。(汗)
連載小説が先日完結したので、やっとこちらを書くパワーが。(笑)
久し振りに『ツインクロス』の世界を書けて楽しかったです♪



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